聖隷浜松病院S棟耐震化増改築工事 CFT工法
現在施工中である聖隷病院S棟耐震化増改築工事の構造について一部紹介いたします。
建物の基本構造は鉄骨造ですが、建物の中心フレームは後述するCFT造となっています。
柱間を広くとれ、平面の自由度が高くなる工法として(柱は鉄筋コンクリート造、梁は鉄骨造の)RCS造がありますが、柱が鉄筋コンクリート造だと今回の建物最下層にある駐車場の車庫幅が狭くなってしまいます。かといってS造(鉄骨造)だと、上層部のアイセンター(眼科、眼窩形成外来、手術室、検査室)で行なう顕微鏡下での診察処置において弊害となる「振動」が発生してしまいます。そこで今回は、アイセンターを擁する部分にCFT工法を採用した、S造とCFT造のハイブリッド構造としました。
以下、CFT造について説明をいたします。
CFT造とは、円形または角形鋼管にコンクリートを充填した構造です。充填コンクリートと鋼管の相互拘束効果(コンファインド効果)により、軸圧縮耐力・曲げ耐力・変形性能が増大します。
それにより、鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比べ、柱寸法を小さく、階高を高くでき、平面的、立体的に自由度の高い設計を行うことができます。近年、大空間や超高層等の大規模建築へ採用する事例が増えています。
その他のメリットとして、
現場での鉄筋工事と型枠工事を削減でき、省力化、工期短縮、環境負荷の低減につながります。
充填コンクリートの剛性が付加されることで、鋼管の大きさや厚さを減らすことができ、条件によっては耐火被覆を省けます。
CFT工法の施工
角形鋼管に充填するコンクリート配合確認
鋼管に充填するコンクリートの設計基準は、強度36N/mm2以上、スランプフロー60〜65㎝と一般的なコンクリートではないので、実際に打設する前にコンクリートの試し練りを行いました。
現場の様子
鉄骨の柱の下部にコンクリート充填用の穴が開けられています。
そこからコンクリートポンプ車でコンクリートを圧入していき、柱上端にいる係員が充填レベルを確認しながら充填していきます。
また、柱に何箇所か穴が開いていますが、これは充填時の空気抜きではなく、火災時にコンクリート内の水分が水蒸気となって膨張し柱を爆裂させないための空気抜き穴となっています。
充填完了したら、下部の圧入口を鉄板で塞ぎCFT工法部分の完了となります。
建物の用途は様々で、空間要求も多岐に渡ります。弊社は建物の特性、要望に合わせた構造をコストも含めて検討し、提案しております。