版築壁
愛知県額田郡幸田町の「三ケ根クリニック」が完成しました。
今回、建築要素として当社では初めて「版築壁」を採用しました。
版築(はんちく)とは、型枠を作り、その中に少しづつ土を入れて強く突き固める方法を繰り返すことで、堅固な土壁などを構築する工法です。
本来は土や石(礫)と少量の石灰や稲わらなどの凝固物の混合剤で作りますが、現在では強度の観点から土にセメントを混ぜて施工することが多いです。土の種類や粗さ、色によって地層のような風合いが出ます。
設計の打合せ段階で「何か温かみがあって、他にはない仕上げができたらいいなぁ。」というお施主様の一言から、以前からしてみたかった「版築壁」を提案しました。
もともとは内装仕上げとして考えていましたが、クリニックという用途上ごつごつした仕上げは使用しにくいこと、やるなら「本物」がよいと施主と設計者の意見が合致し、外部サイン壁として「版築壁」を採用することとなりました。
ただ、現在版築を施工できる職人さんは非常に少ないです。工事の後半になって、やっと施工できる職人さんを見つけることができ、工期内に納めることができました。
一番楽しみにされているクリニックの先生が参加出来る日に施工日を設定し、先生のご家族にも「職人さん」になっていただきました。
8月中旬の酷暑の中を頑張っていただき、よいご経験にしていただけたと思っています。
建物の配色に揃え、今回はグレーを基調とした調色としました。
いざ型枠を外すと、とてもきれいなグレーのグラデーションが現れ、感動です。
雨だれなどへの対策はしていますが、セメントを入れてあっても土壁なので、昨今の暴風雨による侵食は免れません。また、接触による角欠けも気になります。
設計時にそのことを先生に伝えてはいましたが、できあがり後に再度説明したところ「雨に濡れた感じもいいよねー。風雨によるエイジングが楽しみ!」との言葉をいただけました。やってよかったーとしみじみ実感しました。
ぜひ、近くにお寄りの際は「本物の版築壁」を見ていただければと思います。
三ケ根クリニック https://sangane-clinic.com/