豊田市博物館と特別展「古代エジプト展」

豊田市に新しく開館した「豊田市博物館」を訪ねてきました。ちょうどブルックリン博物館所蔵の特別展「古代エジプト展」が開催されており、建築と展示の両方を体験できる良い機会となりました。

大階段と木質イベント空間

館内に入るとまず目に飛び込んでくるのが、大階段を備えた広々としたエントランスホールです。ここは無料で開放されており、木質の温もりに包まれた空間が来館者の憩いの場として機能しています。
イベントや交流のために活用されることを前提としたデザインは、博物館が単なる展示の場にとどまらず、地域の文化活動のハブであることを強く印象づけていました。

緩やかなスロープと立体的な展示体験常設展示のアトリウムには、緩やかなスロープが巡らされており、上りながら展示を鑑賞できる構成になっています。視点の高さが少しずつ変わることで展示物の見え方も移り変わり、来館者が自らの歩みによって新たな発見を得られる仕組みです。壁一面に収められた生活道具やキャラクター、小型車までが組み合わさり、収蔵庫を覗き込むような展示とスロープの動線が一体となって、空間全体を「体験する展示室」へと変えていました。

特別展「古代エジプト展」

今回の目玉である古代エジプト展は、ブルックリン博物館の貴重なコレクションが一堂に会するもの。精緻な彫像や副葬品が並び、当時の人々の死生観や美意識を感じることができました。建築空間の静けさと展示の迫力が相まって、時間を超えるような体験を提供してくれます。

豊田市美術館との対比

敷地隣には、谷口吉生氏設計の「豊田市美術館」があります。こちらは直線的で端正なコンクリートと水盤の空間構成が特徴で、静謐で洗練された「鑑賞の場」として成立しています。一方、豊田市博物館は、木質構造やガラスの透明感、そして大階段やスロープといった動きのある空間構成により、「参加し、体験する場」としての性格が際立っています。両者は対照的でありながら、都市における文化施設の多様性を象徴していると言えるでしょう。美術館が「作品と向き合う静かな時間」を提供するのに対し、博物館は「地域文化と交わる賑わいの時間」を提供しており、豊田という都市に厚みを与えています。

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