BIMを始めて1年半が経ちました

BIMソフトArchiCADを使い始めて1年半経ちました。年末にかけて、ある程度本格的な実施設計に使い始めます。これまでも企画や基本設計、小改修案件に四苦八苦しながら使ってきて、いろいろ気づいたことがあるので、備忘録とこれから始める方の参考になりそうなことを書いてみます。(少し長いです。)


3D表現

まず一番直感的にBIMの威力が発揮されるのはここです。普通の図面を一般の方が読み解くことは難しいでしょう。平面図、立面図、断面図…建築は様々な情報を統合して成り立ちますが、それを頭の中で正確にイメージするのは、設計者であっても簡単ではありません。

3DCADなら、モデルを回転させたり断面を切ったりしながら、直感的に空間を説明できます。発注者や(想像以上に)現場監督との打合せでも、3Dビューを見せた瞬間に理解が一気に深まる場面が何度もありました。
ただし、(楽しくてついやってしまいがちですが)見栄えを追求しすぎると時間がかかってしまいます。設計では「説明に必要な最低限」を整える程度にとどめるのが効率的だと感じました。


図面化の壁

BIMのモデルがあっても、実務ではまだまだ2D図面が中心です。要素や線が思ったように出なかったり、注釈や寸法の位置を調整したりと、意外と「CAD的な根気」が必要でした。

最初は「BIMならすべて自動で図面化できるのでは」と期待していたのですが、そう単純ではありません。
ただ、設定やルールを理解していくうちに、繰り返し作業や2Dでしていた作業が減り、効率化を実感できるようになりました。最初の苦労を越えれば、後から楽になる感覚です。

ただ3Dモデルをつくるだけなら3DCAD(弊社ではVectorWorks)でもできます。BIMが威力を発揮するのはその先です。

ゾーンをきちんと設定しておくと、内部仕上表、面積集計が一瞬で出せます。変更にも強いです。建具のキープランと一覧表も(ある程度)自動作成でき、これは従来のCADにはない大きなメリットです。
それと壁の面積や開口部の周長、コンクリートの体積も拾えます。これはもうちょっと先のレベルですることかと思いましたが、意外と簡単にできました。概算には十分使えます。
もっとも、そのまま発注に使えるほど完璧ではなく、結局チェックが欠かせません。「8割自動化、2割は人の目」という感覚でしょうか。とはいえ、大枠を一気に拾えるのは大きな武器です。

実務で感じた課題

一方で課題もいくつかあります。

  • モデルが大きくなるとPCの処理が重くなる
  • 弊社の協力会社(構造・設備)がBIMを取り入れるにはまだ時間がかかりそう
  • 外部ソフトとの連携(IFC、3Dモデル等)がうまくいかない

特に他ソフトとの互換性が完全ではなく、「BIMならすべてつながる」という理想と現実のギャップを感じました。


■これから挑戦したいこと

ArchiCADを1年半使ってきて、まだまだ課題や伸ばせる余地があると感じています。今後は特に次の3点に取り組みます。

  • 概算に使える数量拾いをできるようにする
    設計の初期段階から概算精度の数量を効率的に拾えるようにしたいと考えています。コスト感を早めに掴めると、計画の説得力が大きく変わるはずです。
  • 社内で使えるテンプレートファイルの精度アップ
    いちから設定する時間を減らし、誰が使っても同じクオリティの成果物が出せるように、テンプレートを磨き込んでいきます。効率と再現性を高めることで、業務全体のスピード感も上げられると思っています。
  • 社内マニュアルの整備
    自分自身の備忘録だけでなく、チーム全体でノウハウを共有できるよう、マニュアルを整えていく予定です。属人化を減らし、BIMを社内標準に近づけることが目標です。
  • コラボレートを使えるようにする
    ひとつのファイルを複数人で編集できる機能があります。2年以内に20,000㎡程度の物件を手掛ける予定ですので、そこまでにはチームメンバー含めて使いこなせるようにならないとなりません。


■まとめ

ArchiCADを1年半使ってみて、便利さと同時に泥臭さも実感しました。それでも「空間が伝わりやすい」「効率化」という点では大きな武器であり、導入してよかったと思っています。

これから始める方には、最初から完璧を目指すより「できる範囲からBIMに置き換えていく」ことをおすすめします。続けていくうちに、自然と使いこなし方が見えてくるはずです。

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